六段受験記(その3)
(その3) 第一印象が大切「口述審査」
集合までたっぷり1時間ある。貴重品をロッカーに入れて着替え、風の吹き抜ける回廊を震えながらトイレに行き、暖房の効いた控室で周りの邪魔にならないように軽く柔軟などする。
そうこうするうちに、石神井道院の斉藤さんが入って来た。手を振って声を掛ける。
「斉藤さーん」
「あれ、河原井さん、どうしたんですか?」
「六段特昇、一緒ですよ」
「えっ、もうとっくに六段取ってたんじゃなかったの?」
「四段は一緒だったし五段だって数ヶ月しか変わらないんですから、六段の受験資格だって同じ時期ですよ」
「そうなんだ」
「真田先生から聞いて、今日斉藤さんも来るの知ってましたよ」
「えっ、そうなの?なあんだ、真田先生、河原井さんも受けるってぜんぜん教えてくれないんだもんな。試験一緒に組めるといいよね、そうならないかな?」
「組めたらいいけど、本部で決めるから期待はできないですよね」
試験前の緊張をお互いに会話で紛らわせているうちに集合時間も近くなり、本堂へ移動。
この日の特昇は、七段、准範士、六段、大拳士、五段、正拳士四段とフルラインアップに加え、本部武専も行われているので本堂は人で溢れている。
続いて口述審査が行われる錬成道場へ。道場前で点呼があり、手順の説明を受ける。私は4番会場の2番目なので控室で待機。1番目の大野木さんがたっぷり20分かかって終わり、次の私を呼びに来てくれる。
「東京大久保道院、河原井敦と申します。よろしくお願い致します!」
初めが肝心、面接官にハキハキと合掌礼で挨拶する。
口述審査
・指導者として心掛けていること、行なっていることは?
・金剛禅運動を日頃どのように展開しているか?
・釈尊の正しい教えとは?
・どのように布教を広めていきたいと考えているか?
釈尊の教えなど、どう答えるか迷う場面もあったが、面接官が助け船を出してくれたり、こちらの印象も悪くないなと手応えを感じるうち審査終了。3番目の南雲さんを呼ぶ。
とにかく第一段階は終了した。
(まだつづく)
十八代 河原井敦