六段受験記(その2)
(その2) 機転がきいた受験日の朝
12月17日(日)、6:00起床。冷蔵庫を開けると、ドアポケットに入れておいたお茶が凍っていて、ホテルの冷蔵庫ではありがちのことなのだが、
「えっ、それじゃあサンドイッチとおにぎりは?」
慌てて取り出すと、どちらもしっかり凍っていて食べられたものではない。
さて困ったが、電気ポットを見て閃き、お湯を沸かしてマグカップと洗面所のコップに注ぎ、その上にサンドイッチとおにぎりを袋のまま置いてみる。
湯気でなんとか食べられるくらいには解凍。我ながら機転に感心し、
「これなら今日の特昇は受かるかも」
と、根拠のない自信を持つ。
荷物をまとめて7:25過ぎに部屋を出る。ちょうどエレベーターに人が乗り込んでいるところで、
「すいません」
と、乗せてもらうと、ドアの開きボタンを押してくれていた男性から、
「河原井さん」
と、声を掛けられる。見れば築地道院の中村先生。
「河原井さん、今日は特昇ですか?」
「はい、六段を受けます」
「そうですか。ウチも四段を二人受けるので、付き添いで着いてきました」
言葉を交わすうちに1階へ。
鍵を返してチェックアウト。すでに待っていたタクシーに乗ると運転手さんが、
「多度津の少林寺さんまでですね。チケットはありますか?」
「いいえ、無いですけど」
「アパホテルでチケットを貰えば、1,600円で済みますよ。普通だと2,000円近くかかりますからフロントで貰ってきた方がいいですよ」
言われたとおりフロントに戻ってチケットを貰う。親切な運転手さんだった。
7:50には本部到着。先に着いていた築地道院一行が建物をバックに写真を撮っている。
「皆んな初めての本部なものですから」
と、中村先生。こちらは飽きるほど来ているが、これまで写真でしか知らなかった人たちには新鮮なのだろう。
(つづく)
十八代 河原井敦