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コラム

千葉の叔父とカラス

2025.07.16

私の叔父は、千葉に住んでいます。
私が物心ついた頃からそこに住んでいますので
およそ50年になります。
現在でもその地域は、上下水道設備が自宅周りのみで
「完結」しています。これは多くの人は意味が分からない
かと思います。
自宅の前には下水道もマンホールもありますが、ただ
「形としてあるだけ」です。どこかの浄水場に流れて行く
ような地下系は一切ないという意味です。
マンホールについては、「浸透マス」の形式になっていて
地面に吸ってもらう方式です。これも土が年月とともに
ヘドロ化してやがて吸ってもらえなくなります。
水のはけない下水道とマンホールでどうするのか。
ちょっとした土砂降りがあれば、家の周りはあっという
間に河みたいな氾濫状態になります。
これは家を購入して間もなくに気づいたそうです。
自分で治水工事をしなければならない…

マンホールの吸ってもらえない水は、ホームセンターで
買ったポンプで汲み出します。家の裏はすぐに山というか
森になっているのでそこに「排水」します。

そこまでの10m 程度をパイプ埋めて排水路として繋いで
やります。穴掘って高低差つけて1本埋めるだけと思い
ましたが、それではすぐに泥が詰まってしまいます。
中間地点に「マス」を設けることで解決するそうです。
裏山に水を流したその先は、流石に「知ったことではない」
とのこと。因みにトイレは水洗です。家の横に浄水槽が
埋めてあって、ある程度濾過した水をやはり裏山に(たれ)流します。

上水道については、これまた家の横に井戸が掘ってあり
ポンプで地下水を汲み上げます。15m くらい掘削したようです。
当時業者は45m と偽ってぼったくったようです。
以前水質検査機関で調べたそうですが、大腸菌が2000個くらい
いたそうです。30年以上前は近隣に養豚場があって、匂いも
ありましたが関連あったのでしょうか。
当初は水に薬品を入れていましたが、面倒になって今は
そのまま使っているそうです。もう数十年間。
子供も3人無事に巣立ちました。子供の頃、「ここ」では
生水飲むなと言われていた意味を近年ようやく理解しました。

こんな生活環境の人が、都内からクルマで1.5h の所で
令和の今も存在することに驚愕します。
水道局とは無関係の(ある意味天然)水で生活している訳です。
叔父の「活躍」は、治水工事だけに留まりません。近隣の草刈りや
枝打ちも勝手に行います。土地の所有者はいると思うのですが、
地価が冗談みたいに安いためか見に来ることもないそうです。
もちろん、買いたい人も全然現れません。
売買には、業者による測量が必要ですが30万円かかります。
この費用すら惜しいほど地価が安いようです。
もう自分で石の杭買ってきてメジャーで測って挿している程。
当然、そんな土地で草木の手入れなんか誰も気にしません。
そこで現地住民である叔父の出番です。
藪蚊とか気になるので無視もできません。
伸び放題の草を刈って回るのは勿論のこと、はみ出た樹木の
枝もバサバサ切っちゃいます。
奥さんは空き地をどんどん開墾して畑にしています。
ある時は、(先述の)裏山から伸びた枝を落とすついでに隣家に
迫っている枝にも(無断で)突撃しました。
結果、大きい枝のハンドリングを誤り、窓割って弁償しました。

停電になれば、手持ちの発電機で(自宅分は)復旧します。
クルマのフロントガラスも解体屋で買ってきて、自力でつけます。
若い頃は、オープンカーが買えないので手持ちのクルマの
屋根を自分で切り取りました。発想/実行力がすごいです。
※今なら車検通らないことでしょう。
DIY ってこういうことなのかなと思います。

草刈機はエンジン式ですが、タンクが割れているモノをボンドで
くっつけて修復を試みていました。何か配線系も弄ってあります。
流石に動かず、私のクルマで新品購入に行きました。
すぐに中古品を買おうとするので説得しました。

そんな叔父ですが、今夏1羽のカラスと出会いました。
おそらく人間の仕業ですが、羽がきれいに半分切られていました。
当然ながら飛べません。叔父はそれに気づいて、連れ帰りました。
畑の中に小屋を建てました。

不恰好ではありますが、カラス用によくもまぁ即興で作れたモノ
だと感心します。何でスケボーが入れてあるのか不思議でしたが、
止まり木ということです。
エサは、その辺でどんどん獲れるミミズ、パン、残飯等を適当に
与えています。雑食で何でも食べますが、すぐ飽きるようです。
贅沢です。私がふと見た時カラスは脱走していました。
飛べないので近辺を歩き回っています。その日は結構簡単に収容
できたみたいです。

翌日、またカラスが小屋にいません。叔父によると今度はわざわざ
出してやったそうです。カラスのストレス(!)が心配だからとのこと。
そもそも今の状態では、ノラネコ、ハクビシン、蛇に襲われると
心配して連れ帰ったのに「放し飼い」は如何なものかと苦言を
呈しました。しかも裏山に降りていたら、もう戻って来られない
気もします。
周囲を探しましたが、カラスの姿は全く見えませんでした。
流石にもう戻らない気がしました。以前カメを助けたこともあり
ますが、最後は逃亡されたそうです。水場なんて下水しかないのに。

果たしてカラスは、その日の夕方に無事「帰宅」しました。
エサで誘導したら素直に小屋に入ったそうです。
カラスもエサをもらえると懐くのでしょうか。
隣家のおばさんによると、羽はまた生えるとのこと。
以前飼っていたインコの羽が生えた経験からみたいです。
カラスも飛べないうちはここに居て利用してやろうとか
考えるのでしょうか。

最後になりますが、カラス、スズメ、ハト等については治療の為の
保護(捕獲)や飼育、駆除等は違法行為となります。懲役1年未満とか
罰金100万円以下とか決まっています。鳥獣保護管理法です。
叔父みたいなことはしない方がいいです。
また、農家にとってカラスは忌々しい害鳥だとは思います。
殺して吊るして、仲間への見せしめとかにするらしいですが、
これは違法行為になってしまいます。

次回のお盆にまた墓参りに行ったとき顛末を聞きます。