昨今のマグロ事情2025
普段私がスポットのお仕事を頂くチャンネルは何個かあります。
ウーバーはやったことないですが、出前館にはよくお世話に
なっています。牛丼、カレー、ドーナツ、コーヒー、マック、
モス、ケンタ等々を配ったりしています。
帰宅したくなったらいつでも切り上げることが可能です。
最初の配達から自宅近辺にお届けとなるパターンもあって、
そのまま帰宅の誘惑に負けたことも多々あります。
普段は搬入や配送のスポット案件を頂いているチャンネルを
何気なくスマホで見ていたのですが、そこに驚きの求人が
突如流れてきました。
条件は以下の通り。
(1)期間:1年
(2)報酬:1,700万円超 ※現金渡し
(3)人員:10名
(4)条件:健康であること。
横目で画面をちらっと見ていて焦りました。急にチャンスだと
気色ばんでしまいました。慌てて案件詳細を確認します。
何のお仕事か分かるでしょうか。推測して下さい。
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正解は、『マグロ漁船員』です。
借金返済で乗せられる話とかよくありますが、リアルで
見たのは初めてです。こんな金額だとは…
よくよく見ると、年齢は35歳まで。ガックリしました。
20年遅かったです。一応他の条件も確認しました。
(5)期間中(乗船中)の連絡手段、食費負担、保険はなし。
(6)持ち物:布団、座布団、服、多少の小遣い(寄港時用)、
カッパ、軍手、コテ(?)
最後のアイテムはよく分かりませんが、「保険なし」とは
何とも恐ろしいです。生命保険のことでしょうか。
座布団はともかく、布団担いでの電車移動は地味にきつそう。
お金も日本円でいいのでしょうか。
(7)審査申込の締切:明日の午前
(8)出航:宮城県石巻で20日後
審査に提出する書類は、免許と住民票でいいらしいですが、
あまりにも急な話で笑いました。
審査後の流れとしては、採用証明書を受け取って、海自
事務所で船員手帳発行を受け、健康診断です。
こんなのに集まってくるのはどういう人なんでしょうか。
1日かそこらで応募を決断、3週間後にはもう海上にいるという
あんまりなスケジュール。
よく考えると、「男に限る」という条件の記載はありません。
マグロ漁船の求人も男女平等の時代なんでしょうか。
1年間でどこの国に行くのか、拘束とかはされないか、部屋の
間取りはどうか、テレビは映るのか、トイレは水洗か、入浴は
可能か、おやつは出るか、お代わりの制限はあるのかとか
色々疑問は尽きません。
船上での作業スケジュールは、その日の天候とか波の状況で
船頭が(気分で)決めるので詳細未定らしいです。
当たり前と言えば当たり前ですが…
私の親戚に船乗りの叔父さんがいました。マグロ漁船ではなく、
タンカーに乗って海外に行っていました。
小学生の頃、港に家族で見学に行ったことを今も覚えています。
タンカーの積荷はボーキサイトや石炭。ボーキサイトが何で
あるかは45年経った今でも知りません。調べる気もないです。
船室も見ました。子供の頃はあまり感じませんでしたが、現在の
体格の自分があんな狭苦しい空間にいれば、おそらく半日で
音をあげると思います。
巨大なタンカーの甲板中央にはぽっかりと大きな穴があいていて、
石炭等がクレーンで収められていました。
叔父さんの会社はかの「三光汽船」でした。現在どのくらいの
人がこの企業名を覚えているでしょう。
倒産のニュースが新聞の1面を大きく飾った光景は、今も脳裏に
焼きついています。
叔父さんはその後故郷の富山県の公務員として、湾の渡し船
操業の職に就きました。毎朝通勤通学の人々が利用します。
勤務中は空き時間も多いので、ランニングをしていたら昼間から
(仕事もせずに)フラフラしていると噂になり断念したそうです。
夫婦合わせて年収1,000万円ですから立派な家も建てました。
7人兄弟の末っ子で、徒歩5分のところに本家(長男の家)があります。
その本家が2世帯住宅に建て替えた際、奥さんに強く諭され、お祝いに
100万円包んで持って行ったら、腰を抜かされて受け取ってもらえ
なかったというエピソードがあります。
タンカーの話に戻りますが、甲板には手摺なんかなかった気がします。
記憶はあやふやですが、そういうことも多いと思います。
数ヶ月の航海中にいなくなってしまった同僚の話を聞かされました。
単なる事故なのか、「人為的な要因」もあったのかは当事者以外には
分かりません。
帰港後、警察の取り調べを受けたという話は聞いた覚えがないです。
「証拠」なんかそうそう出ないでしょう。
マグロ漁船も劣悪な居住環境、過酷な作業、ストレスだらけの1年間で
どんな「事故」に遭遇するか分かりません。
そう考えると、1年間こき使われて最終的には(夜中に)海に落とされるの
では…という懸念もあります。そもそもヒラの船員に1,700万円も
渡して採算が取れるのでしょうか。いくらマグロが大漁でもです。
おまけに燃料費も家賃(?)も食費も水道光熱費も丸抱えです。
獲ったマグロの保存、運搬もタダではないし。
全員生きて帰らせたら赤字のような気がしてきました。
色々と(慎重に)検討した結果、応募を断念しました。
期限、年齢のこともあるけど、船酔いも心配だし。